第9章 小湊亮介の場合
夏の大会も終わりーー
部活も引退して、俺たち3年生は普通の受験生になった。
元々、本好きの俺は図書室にいることが多くなった。
「真琴先輩!」
「あっ…佐伯くん。」
ふと外を見ると真琴がいる。
隣には最近いつも真琴の周りにいる男ーー
倉持や沢村の話だと1年生のサッカー部。
真琴に一目惚れして、夏休み中に告白もしたが諦めてないらしい。
あ~ぁ。
そんな思わせ振りな態度だから諦められなくなるのわかんないのかな?
俺の視線に気付いたのか真琴が手を振ってきた。
「小湊先輩!」
俺もニッコリと手を挙げる。
一緒にいた佐伯って奴が俺を睨んだ気がした。
おっ!いい度胸だねぇ。。。
「真琴~ちょっとこっち来てくれない?」
「はい!今、行きます!」
クス…そんな嬉しそうな顔しちゃって。
「じゃぁね、佐伯くん!」
真琴の後ろ姿を悔しそうに見送る佐伯がこっちを見た。
しばらくして真琴が図書室に来た。
「小湊先輩どうしたんですか?」
「ん~ごめん。用事済んじゃった。」
「え~っ、もう。なんですかそれ~!」
クス…何の疑いもなくここまで来るなんて。
そんなんだから、あの1年の佐伯くんに言い寄られるんだよ、まったく。。。
用もなく呼ばれても怒ることなく真琴はそのまま図書室に残った。
本の話など他愛ない話でチャイムがなるまで二人でいた。
そんな、ある日ーーーー
体育のため廊下を純と哲と歩く。
「部活も引退しちまったら、体を動かすのも体育の授業くらいだな。」
「そうだなーーあれは真琴じゃないか?」
哲が廊下の先を見た。
「あぁ…って、またあの1年と一緒か。」
純が言うあの1年とは、佐伯のこと。
「真琴も困ってるみたいだから、いつも声掛けてやるんだけど…ホントのとこはどうなんだろうな?」
「最近、楽しそうだよね?」
「亮介もそう思うのか?」
「も…って?」
「いや~倉持たちが真琴がオチるのも時間の問題じゃないかってさ。」
へぇ。。。そうなんだ。
そんなこと話してると、真琴が俺たちに気が付いた。
「あっ、こんにちはー」
「おう。真琴。」
「先輩たち次、体育ですか?」