第8章 伊佐敷純の場合
それは突然やってきたーーー
真琴とは相変わらずマンガの貸し借りとかで会っていた。
日々、目の当たりにする哲に対する真琴の反応。
今も目の前にいる真琴は哲を前に顔を赤くして…
悔しいが、その顔がまた可愛いと思えてしまう。
でも、その顔は俺には向けられることはないーー
哲もまんざらじゃないよな…
アイツが頭を触るのは真琴だけ。
クセのように真琴と別れるときに軽く頭を触る。
今ここに一緒にいる俺…邪魔だよな。
そう考えると、急にここにいるのが辛い。
ははっ…よく見ると二人、お似合いじゃねーかよ。
「悪ぃ…俺ちょっと行くわ。」
「えっ…伊佐敷先輩?」
二人の顔も見ないで俺はその場を離れた。
無意識に足が向いたのは屋上だったーー
柵にもたれてグランドを眺める。
はぁ~
逃げるように去ってきて、俺…カッコ悪ぃな。。。
哲には野球では敵わなかった。
まさか、好きなヤツができても…
それも、哲には敵わないのか。。。
ホント悔しいよな…哲はいつも俺の前を行くーー
その距離はなかなか縮まらねぇや。
俺がキレイな青空を見上げたーーその時。。。
「伊佐敷先輩!」
振り向くと、そこには真琴がいた。
「なっ!お前、なんで来たんだよ?」
「なんでって…先輩こそ、どうして急にいなくなっちゃっうんですか?」
今まで見たことない…真琴の表情。。。
なんで…そんな顔してんだ?
「なっ…なんでって…あっ、あれだ!せっかく俺が気ぃ遣ってやったんだろーが!」
「気を遣うって、どうゆうことですか?」
少しムッとしたような真琴の顔ーー
俺は居たたまれなくなって、またグランドに目をやる。
「ったく…見てたらわかんだよ。お前、哲のこと好きなんだろ?だから、二人にしてやったんだろうが。」
本当はこんなこと言って、真琴が認める言葉なんか聞きたくねぇ…
「私…そんなこと頼んでませんよね?」
「………。」
「私が一緒にいたいのは伊佐敷先輩なのに!」
「へっ?!」
えっ///おい…今なんつった?
「なんで…結城先輩なんですか。。。」
「なんでって…お前、いつも哲の前じゃ顔真っ赤にして、俺とじゃ態度が違うじゃねーかよ!?」
そう言い捨てた…次の瞬間ーー