第1章 出逢い
再びグランドに目をやると真琴が打席に立っていた。
『マジで野球やってたんだ。フォームいいじゃん。』
俺がそう言うと川上が
「運動神経良くて、なんでもできるらしいよ。頭もいいし。」
『へぇ~。頭もね…一緒に育ったのに倉持とは大違いだな(笑)』
「あん?うっせーよ!」
そう倉持が睨んできたが、すぐグランドに目をやり小さな声で「いけっ!」と呟いた。
同時に真琴は思いっきりバットを振り快音を響かせた打球はちょっと詰まらせ気味。
あ~一塁セーフってとこかな。
なんて思ってたら倉持が今度は「真琴!行けよ!!」と叫んだ。
『へっ?早っ!!』
思わず声に出てしまった。
倉持並みに早い!!
スライディングしたものの余裕で二塁。
「ヒャハ♪真琴もまだまだだなぁ~。」
なんて言ってる倉持に向かって真琴はガッツポーズしてる。
「調子に乗んな~!」
倉持はヒャハハ♪と笑って拳を挙げて答えていた。
やべぇ…もっと見ていたい。
でも、昼食べに行かねぇと午後から持つわけない。
さっさと食べて戻ってくるかな。
「真琴すげぇ足早くない?倉持並みじゃない?」
寮に向かって歩き出しながら川上が言った。
「俺ほどじゃねーよ。」
『てか、なんでソフトの試合出ての?』
「なんか野球やってたって噂を聞いたらしくて助っ人頼まれたらしい。」
『ふ~ん。』
「真琴ってバスケ部だけど、バレー部や陸上部からも入部のスカウトあるよな。」
マジかよ。ホントになんでも出来んのかよ。
「アイツ、たぶん御幸よりサッカーも上手いぜ。」
『あ!?』
倉持はヒャハ♪と言って食堂に入って行った。
食堂に戻るのが遅くなったのもあり、俺たちは少し急いで昼飯を食べた。
そのお陰かグランドに戻る前にまたソフトの試合が見れた。
あの子はライトを守っていた。
やっぱり守備も落ち着いていて、なんなくこなしている。
最終回。試合には勝っている。
そして最終打席が回ってきた。
「真琴ー!ホームラン期待してるぞ!ヒャハ♪」
倉持が叫ぶと少しこっちを見て「うっさい!」と口が動いていた。
「お前ら!ソフトなんて見て何してんだ?」
後ろから2年生の先輩たちが声を掛けてきた。
『倉持の彼女が試合出てるらしいですよ。』