第5章 夏合宿
倉持side
なんか気に入らねぇ。
なんで真琴が寮にいるんだ?
御幸はともかく!純さんたちや沢村たちにまでチヤホヤされてる真琴。
ガキの頃からずっと一緒で兄弟みたく傍にいるのが当たり前だったのに…
なんで寮に真琴がいるのが落ち着かねぇんだ?
俺が自主練を終えて部屋に向かっていると、タイヤを引っ張って走ってる沢村がいた。
「倉持先輩!さっき真琴先輩が貸してた辞書返して欲しいって部屋に来ましたよ!」
「やっべ…返すの忘れてたわ。」
「部屋に上がってもらってますからねー。」
「わかった。お前もあんまり走り過ぎんなよ!」
「わかってますって!」
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「真琴、ワリィ!…あれ?」
沢村が部屋にいると言ってたから、俺は部屋に入るなり謝ったが、部屋には誰もいなかった。
「なんだよ、いねーし。」
俺は部屋に上がり少し汗をかいたTシャツを脱いで着替えた。
その時、視界の隅で何かモゾッっと動いた気がした。
「うお!」
振り向くと真琴がベッドで寝ていた。
「なんだよ、真琴いたのかよ。しかも勝手に俺のベッドで寝てんじゃねーよ。」
真琴は気持ち良さそうに俺の枕を抱き締めて寝ている。
「ったく…増子さんや沢村が帰ってきたらどうすんだよ。コイツは本当に女の自覚あるのか?」
コイツ…こんなに色白かったっけ?
一緒に野球やってた頃は真っ黒に日焼けしてたのに。
髪も長くなって…
俺は無意識に真琴の髪を一束すくうと指先からサラリとすり抜ける。
「ん…」
「///!///」
やっべ!俺、何やってんだ!
「う…ん…」
真琴は少し身動ぎ俺の枕に顔を埋めて、枕をぎゅっと抱き締めてーー
「…ん…。洋…ちゃ…ん。」
「へっ?!」
ドキン。。。///
寝言?俺の名前…しかも枕抱き締めてなんて…
なんか、真琴に抱き締められた錯覚に陥った。
また俺の手が無意識に真琴に伸びようとした時ーー
「倉持、いるかー?」
ガチャっとドアが開くと同時に御幸が入ってきた。
俺は慌ててベッドから離れるとその辺にあった雑誌を開いた。
「なっ、なんだよ?」