第2章 凛とした強さとギャップ
真琴は困ったように笑ってまた黙った。
あのことーーー聞くなら今…だよな。
『ねぇ?』
「…うん?」
真琴は前を向いたまま返事をした。
『もうひとつ俺さ…見たんだ。』
「えっ?」
やっと真琴がこっちを見た。
『去年…入学してすぐくらいの頃ーーー新人戦か何かの試合の後、体育館裏で真琴…泣いてただろ?』
真琴は少し考えてから口を開いた。
「あぁ…うん…泣いてた…」
『なんで?』
「…ん。。。」
『あっ…ごめん。でもさ、俺ずっと気になってて。。。その後、倉持の幼馴染みって知ったけど…もし試合で負けたとしてもそれで泣くような子には思えなくてさ。』
「ははっ…さすが御幸くん。」
また真琴は困ったように笑った。
「そうゆうの気付いちゃうんだね。」
そう言うと真琴はゆっくりと話してくれたーーー
「私が野球やってたの知ってるよね?」
『うん。』
「小さいとき私すっごい泣き虫でさ~いっつも洋一の後くっついてたの。“ようちゃーん”って。」
真琴は遠くを見て懐かしく笑う。
「洋一が野球初めたら私もやる!って言い出しちゃって…みんなを困らせたなぁ。洋一には泣き虫には無理だ。やるなら絶対泣くなって。」
「お陰で強くなったし、野球も上手くなった。小さいときは二人で甲子園行くんだってさ。。。」
ふふっと情けなく笑う真琴を俺はただ黙って見ていた。
「でもさー野球は他の男の子にも負けてないけど、私は甲子園に行けない…中学校でさえ野球ができない…仕方ないんだけどさ。な~んか仕方なさ過ぎて落ち込みもしなかった。だって私…女の子なんだもん。どうしようもないでしょ?」
『真琴はホントに野球好きなんだね。』
「うん!楽しかったから。」
『じゃ、ソフトとかマネージャーとかは考えなかったの?』
「ソフトは中学校になかったし、マネージャーは辛いかな…やりたくなっちゃうから。」
『そっか…そうだよな。』
「うん…そしたら洋一が“甲子園は俺が連れてってやるからお前は好きなことやってろ!”って…アイツ覚えるかな?」
どう思う?なんて俺に聞くなよ。。。
二人だけの約束みたいなのーーー