第3章 市丸裏夢
私は三番隊の第三席だ。ここまでの地位に上り詰めるのにどれだけ苦労したか分からない。けれど努力のおかげでお給金も良いし悪い事なんて仕事が増える以外にひとつも無い。…とはいえ、ウチには今一時的に副隊長が居ないから、その分の仕事が全て私に回って来るのだけど。
大量の書類を持って隊首室に向かう。
「市丸隊長、書類持って来ましーー…。」
いつも聞こえてくる調子のいい声が聞こえて来ない。…居ねぇ。また逃げたなあの人!探す方の身になれってもう何万回と言っているのに!!
私は持っていた紙束を机にドサリと置いて瀞霊廷内の霊圧を探る。……いたいた。
「全く、見てないと直ぐ逃げるんだから…!」
仕事をサボる隊長を探しに行くのは三席の仕事じゃないと思うんだけどねぇ。不満を隠し切れないまま、人がおらず広々とした隊首室で深く溜息を零し市丸隊長を探しに向かった。
彼を見付けるのはそう難しくは無かった。瀞霊廷内を探していると市丸隊長は、同じくフラリとサボっていたのか京楽隊長と談笑をしている。これは、多分七緒副隊長も怒りながら探してるだろうなぁ。
「見付けましたよ、市丸隊長。仕事に戻って下さい。」
「おやぁ、ちゃんじゃないの。相変わらず、大変そうだねぇ。」
「あらら、もうバレてもうた。早かったなぁ。」
「京楽隊長、私が大変そうに見えるなら七緒副隊長が大変なのも分かりますよね?」
「ボクはちゃんと七緒ちゃんに休憩して来るって言ったから。」
「それは失礼しました。戻りますよ、市丸隊長。新しい書類が届きました。」
「はぁ…しゃあないなぁ。ほな、またな京楽隊長。」
「ちゃんもたまにはお喋りしにおいでよ。またね〜。」
「ありがとうございます。」
緩々と手を振る京楽隊長に頭を下げ市丸隊長と共に三番隊へ戻る。自分より幾分身長の高い彼を見上げると、いつも通り口元に貼り付けたような笑顔で顔を覗き込んで来た。
「相変わらず猫被るの上手いなぁ、キミは。」
「…何を仰っているのか分かりませんね。」
「ボクの前でも猫被るん?オニーサンそっくりやわ。」
「あんなに胡散臭く無いです。」
「ふは、藍染隊長に聞かれたらまたお仕置きされんで。」
「市丸隊長が言わなければバレませんよ。」
「へー。言わんと信じてくれはるんや。優しなぁ。」