第2章 平子夢
「平子隊長〜!遊びに来ました!」
「アホ、何回言うたら分かんねん!五番隊は遊び場ちゃうわ!」
最近執務中、ノックも声掛けも無しに勝手に隊首室にズケズケ上がり込んでくる奴がおる。それがこの目の前に居る女、や。怒鳴ろうが摘み出そうがあの手この手を使い何がなんでも仕事の邪魔をしに来る。肝が据わっとるっちゅーか、怖いもの知らずというか。隊長に怒鳴られて引かん5席なんておるか普通。
「良いじゃないですか、隊長も暇でしょ?構ってくださいよ〜。」
「何処をどう見たら暇に見えるんや。どう見ても真面目に執務しとるやろ。」
「えー…仕方ないですね…じゃあ待ってるので早く終わらせて下さい。」
「待たんでええから十三番隊帰りや。」
相変わらず話を聞かないはオレの後ろに立つと勝手に髪を触り始めた。なんなら上機嫌に鼻歌まで聞こえて来るんやけど。もう何言ってもダメやコイツ。
「平子隊長の髪は本当にサラッサラですね。触り心地抜群!」
「せやろ、ちゃァんと手入れしとるからなァ。」
「私より綺麗ですもんね〜。」
櫛が丁寧に髪を梳かす。誰かに髪触られるっちゅーのもまた変な感覚やけど、コイツが此処に来る度触るせいで慣れてしもうた。は自分より長いオレの髪を弄るのが好きらしい。みつあみ、ツインテ、団子、ポニテと好き勝手変えられる。
「ポニテにすると項が見えて色気有りますね…。」
「鼻血拭けや。ちゅーかオッサンの反応やぞソレ。」
「スミマセン、あまりにも美人でびっくりして…。」
「男に使う褒め言葉ちゃうわ!」
顔を真っ赤にして鼻を抑え顔を逸らす。ホントに女か。スケベ親父の反応そのものやんけ…。
…全く、こうも煩いと仕事に集中出来ん。
「しゃあないなァ…行くで。」
「何処に…?」
「休憩や、休憩!」
「デートですか!?嬉しい!」
「話聞け!!」
筆を置いて立ち上がるとは子供みたァに目をキラッキラさせて両手を合わせた。さっさと甘味処でも連れてって十三番隊返そ。
「あっ、平子隊長待って…!」
「何や、………。」
振り返った瞬間、カシャッと小気味いい音が響く。の手にはカメラが握られとる。コイツ…!
「何勝手に撮ってんねん!スケベ!」