第2章 プロローグ
とある事件をきっかけに理緒は声を失くした。それにより周囲は、同情に満ち満ちた。
理緒にとってそれは傷を癒すどころか苦痛が増すばかりであった。
可哀想だからって、私に優しくしないで。憐れむくらいなら、放っておいて。
自然と理緒は人から距離を置くようになった。しかし、それを周りは良しとしない。
憐れだって見下して、優越感に浸りたいが為に優しくする。そんな自己満足に付き合うほど、私は暇じゃない。
理緒は寄ってくる人に冷たくして、避けるようになった。すると今度は、好意を仇で返されたと恨み言を吐く輩ばかりが増えた。
人間関係が億劫になった理緒は、仕方がなく親に相談をした。
学校を変えたい、事件のことを誰も知らない土地に引っ越して、一人暮らしをしたい、と。
許可はあっさりと降りた。
厄介者の私を追い出すには都合が良かろう、と理緒は嘲る。