第13章 蟠り
*主人公side
「.....お前、いつも首につけてる制御装置、どうした?」
焦凍は、私の首元に視線をやった。
『わ、よく気付いたね。
実は午後から外してみたんだ!みんな—-ってか主にデクくんの影響なんだけど、がむしゃらに頑張る姿を見てたら、個性の制御ができないとかうだうだ言って甘えてることが悔しくなってきて。
私も無茶してみようと思ったわけです。』
「なるほど。
緑谷か.....気持ちは少し、わかる気がする。」
一瞬、間が空く。
これまで俯きながら弱々しく言葉を紡いでいた焦凍が、
顔を上げて真っ直ぐ私の目を見つめてきた。
──ああ、つくづく思うけれど、このオッドアイはずるい。
あまりにも綺麗で、何も言えなくなってしまう。
「....なぁ、リョウ」
『ん?』
「体育祭が終わったら....また、家に行ってもいいか?
お前に話したいことがたくさんあるんだ。」
焦凍からの思わぬ提案に、胸のモヤモヤが一気に晴れた気がした。
さっきまでの緊張が解けて、顔が綻んでしまうのが自分でもわかる。
『.....はは、やだなぁ、なに急に改まっちゃって。
焦凍が自分から話してくれるの、待ってたんだよ。』
「.....!
そうか....本当、お前には救われてばっかりだな。」
焦凍の表情が、少しだけ柔らかくなった気がした。
彼は通りすがりに私の頭に軽く手を置き、無茶すんなよ、と一言残して去っていった。
気付いたら、先ほどまでの倦怠感も緊張感も不安も全て吹き飛んでいた。
目の前の世界が一気にキラキラして見える。
私は、軽い足取りで控え室に向かった。