第6章 猫とクラスメイト
*轟side
『....っ、焦凍....?』
気付いたら、隣に座るリョウの体を抱きしめていた。
こんな小さな体で、こいつはいろいろなものを抱えてきたのだろう。
「同情」なんて言葉では片付けられない、複雑な感情が脳を支配した。
俺の胸元にすっぽり収まる頭を、優しく撫でる。
「....面白くもねぇのに無理やり笑おうとするの、やめた方がいいぞ」
『...!』
「お前がいると場の雰囲気は明るくなる。お前の笑顔で救われる奴はたくさんいる。
でも、お前が悲しい時は誰が助けるんだ?無理して元気なフリしてたら、そのうち潰れちまうぞ。
せめて...俺の前でくらい、無理して笑おうとすんな。」
『....』
リョウは、何も言わなかった。
代わりに、無言で俺の背中に力強く腕をまわした。
今思えば、自分でもどうしてそんな気になったのかわからない。
「少しだけ、俺の家族の話をしても良いか」
この言葉を皮切りに、俺は、親父との確執について話した。
どこまで話すべきか迷ったが、
この時は、火傷の痕の話はしなかった。
「お前の話を聞いて、何となく、俺も伝えておきたいと思った。
今はこれくらいしか話せないが....
また今度、この続きを聞いてくれ。」
『うん...話してくれてありがとう。
なんか、友達にこういう話したことないから少し恥ずかしいね』
照れくさそうに笑うリョウにつられて、
自分の口角が少しだけ上がるのがわかった。
『雄英に入って、焦凍とこうやって仲良くなれて本当に嬉しい。
今日は遊びに来てくれてありがとう!
また明日ね』
自分の家庭のことなんて他人に話しても何も変わらない。
だが、今日は少しだけ、家に帰る足取りが軽くなった気がした。