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電撃少女はヒロインになりたくない

第2章 プロローグ


*主人公side

「橘さん、雄英高校ヒーロー科の推薦入試合格したって本当!?」

古今東西、人が噂話を好きなのは世の常だ。
誰かに話した覚えがないことだって、知らぬ前にあっという間に広まってしまう。


家庭の事情で長期間海外に住んでいた私は、新年を迎えて間もなく、日本に帰国した。
帰国した理由は、国内トップのヒーロー養成機関・雄英高校に入学するためだ。
幸いなことに先日の推薦入試に合格し、4月から進学することが決まったのだけど、海外生活の長い私を心配した家族が「少しでも日本の生活に慣れるため」と、進学までの3ヶ月間だけ日本の中学校で過ごすことになった。


ただでさえ転校生は目立つというのに、こんな変な時期に転入してきたということで、入学して1ヶ月たった今でも好奇の目を向けられることが多い。


『よ、よく知ってるね!まだ数人にしか話してなかったんだけどな.....』


廊下で突然他のクラスの知らない男子学生たちに囲まれた私は、動揺を隠しきれずに隣を歩く友人に目線をやる。


「ごめんリョウ!つい自慢したくて隣のクラスのやつにも言っちゃった!」


「あんた、顔も可愛くて個性も派手な上に推薦で雄英高校に進学って...キャラ欲張りすぎだよ。またファン増えるじゃん。」


『ここぞとばかりにいじるのやめてよ...案外身の回りに雄英志望の子がいなくてちょっと寂しいんだからさ...。せっかく前のめりで帰国したから、あわよくば同じ進学先の友達ができたらいいなぁと思ってたのに。』


騒ぎ立てる友人に向けて頬を膨らますと、先程話しかけてきた他のクラスの人が何かを思い出したような顔をした。


「それでいうと、うちのクラスにも雄英のヒーロー科志望が2人いるよ!」


『えっ!ほんと!?』


「うん...ただ....ねぇ?」


「あいつ...友達になる、って感じでもねぇし、もう片方に至っては無個性のオタクだからなぁ...」


目を輝かせて勢いよく食らいついた私とは対照的に、彼らは言葉を濁した。


『何か訳ありなの?でも全然良い!私から会いに行きたいから、名前を教えてもらってもいい?』


「橘さんにお願いされたら断れないよなぁ...”爆豪勝己”と”緑谷出久”だよ。どちらも癖強いからおすすめはしないけどね...」
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