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電撃少女はヒロインになりたくない

第19章 独占欲


*轟side



『ルイ、こんなとこで何してんの。』


「家族なんだから、同じ家に帰ってくるのは自然なことじゃない?」


『普段は研究施設に滞在するって言ってたじゃん』


「帰国したばっかなんだもん、最初くらいゆっくり家族と過ごしたいじゃない?
成長した妹と、一緒にお風呂に入ったり、寝顔を眺めたりしなきゃ」


『帰れ変態』



学校での様子から薄々勘付いてはいたが、どうやら彼は度を超えたシスコンらしい。



「ところで、こちらは?随分と親しげだったけれど」



そして、言わずもがな、リョウに近付く存在に対しては、露骨に警戒心を向けてくる。
笑顔だが、目は笑っていない。



『同じA組の轟焦凍。
家が近所だから、こうやってよく一緒に帰ってるの...っておい、クラスメイトを睨むな。』


「ああ。エンデヴァーのとこの半冷半燃の子ね。
リョウの兄のルイです。ほどほどによろしく。」



ルイさんは、明らかに俺に興味なさそうに、手を差し出した。
こんなに敵意のある握手は生まれて初めてだ。




「...轟です。よろしくお願いします。」


「それじゃあ少年、また学校で。」



ルイさんは、リョウの肩に手を回し、俺に一瞥をくれた。
その冷たい視線からは、はやく帰れ、という無言の圧が伝わってくる。



「...はい、これからよろしくお願いします。
それじゃあリョウ、また明日。」


『じゃあね。...あ、焦凍。』



軽く頭を下げて家に帰ろうとする俺を、リョウが呼び止めた。
振り向いた瞬間、穏やかな風が頬を撫でた。



『さっきの答え、また今度ね』



リョウは、俺にしか聞こえないように小さな声でそう言い、無邪気に笑った。
柔らかな髪の毛が、風でサラサラと動いている。
夕日が反射した瞳は、とても綺麗で、吸い込まれそうになった。


──ああ、この感情は、なんて言うんだろうな。

俺から仕掛けたつもりだったのに、すっかり完敗した気分だ。
しかし、不思議と、気分は悪くない。


そう思いながら、俺は、軽い足取りで帰路についたのだった。

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