第7章 眠れる君に落とした囁きは
俯きながらも身を起こして、宗次郎に身体を向き合わせる──視線は合わせられないのだけど。
……どうしよう、どうしよう。
「……」
「ご、ごめんね…聞かなかったことにしよっか…?」
「…その必要は、ありませんよ…」
思わず「え?」と声を漏らして宗次郎の顔を見る。
──真っ直ぐこちらを見つめるけれども目元まで真っ赤で。膝の上に乗せている両手はぎゅっと拳を型取っていた。
「改めて言います。」
真剣な眼差し。
「蛍さんが、好きです。」
直後に宗次郎は、少しだけ眉を寄せたけれど。目元は柔らかくて優しくて。
困りながら笑っているようだけど、けれど、意を決した──そんな表情で蛍を見つめた。
「多分以前から…好きだったんだと思います。怪我をして意識のなくなったあなたを見て、僕は気がおかしくなりそうだった…」
「……」
少し震えている宗次郎の手。
はあ、と息を漏らして宗次郎はもう一度蛍を見つめた。
「…すみません、僕も気持ちの整理がついてないまま、こんなこと言ってしまって…僕自身、思わず出てしまった言葉に気付かされたみたいで。変ですよね。
だから……その、今すぐあなたと恋仲になりたいなんて、そんなことはとても言えないけど…。
でも、蛍さんに今はその気がなくても…いつか好きになってもらえるように、頑張りますからね…!」
「…宗次郎…」
「すみません、女性の部屋に長々と…僕はちょっとこれで失礼します…!」
あはは、と照れ臭そうに切なげな笑顔を浮かべて部屋を後にしようとする彼。
──気持ちに理解が追い付いてないのは、
「待って、宗次郎…」
「…っ!」
指先を伸ばす。逃げられてしまいそうだったけど、私の指先は彼の振った袖にかかっていた。
振り返った熱い眼差し。
──気持ちに理解が追い付いてないのは、多分、彼だけではなくて。
「…待って…私も、好き……」
「えっ?」
眠れる君に落とした囁きは
(ずっと隠れていた慕情のかけら)
『宗次郎とりあえず…そういうことで…!』
『は、はい…(待ってください、蛍さん、なんて…?わぁ…どうしよう、どうしたらいいのかな…?)』