第23章 はじめての
「…その、やっぱり少し恥ずかしいですね。」
「…うん…」
蛍もやはり恥ずかしいようで伏し目がちになりながら呟くけれども。
「…宗次郎…実はね、私…」
「はい?」
「ファーストキスだったの…//」
「…えっ、そうだったんですか…?」
「宗次郎でよかった…」
思いがけない彼女の言葉に宗次郎は目を見開く。
次第に、動揺も相まって殊更恥ずかしさが積もり積もってきたのか、頬を染めながら腕の中の蛍を見つめる。
珍しく慌てている彼の様子に──つい言ってしまった、失言だったかもしれない…と思いを巡らせる蛍だったけれども。
その瞬間宗次郎にぎゅ、と抱かれて我に返る。先程までの丁寧な所作とは打って変わった力強さに、居たたまれなさや恥ずかしさといった感情が早急に内側から込み上げてきて。
「そ、宗次郎…っ?//」
ただただ、どうしよう、と思うばかりで、その心のままに彼の名を口にしてみたのだけれど。
彼の表情を窺い見ると──奔る衝動もあるのであろうけれど、ある心積もりをしたように揺らがない瞳に気圧される。染まりきった赤面を隠そうともせずに、意を決した宗次郎は蛍の瞳を見据え。真一文字に結んだ唇を開いて。
「……もうずっと大事にします。」
「…えっ…!?//」
「大好きです…!」
愛しくて愛しくてたまらない、というように。戸惑う彼女の心内を知りながらも、宗次郎は蛍の温もりを決して離さないとばかりに、もう一度強く手繰り寄せて抱き締めた。