第1章 #1
「先輩そんなエロい人だったん?はよ教えてや」
ぐち、と入ったままの指先が内壁を強く擦る。
『いあぁ!も、やめ…ぅ』
「熱くなってるココ…俺のだったらもっと良くしてやれるんですけど…どうなん?」
『ぇ…』
「やから…今より良くなってみん?俺と…」
興奮からか頬の染まっている財前にどきりとした。欲のままに頷いて、その先はあまり覚えていない。
ただ去り際、寒くないようにとマフラーを巻く冷たい手は優しかった。
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『財前くん』
「…先輩」
ドキドキして声を掛けると、普段通り気だるそうな顔で振り返る。その様子に安心しつつ少し寂しさを感じる。
『これ…ありがとう』
「ん。風邪引かんのやったらよかったですわ」
「なんや名前に財前やん!何してん?」
ほとんど人のいない所を狙ったつもりだったが、偶然通りかかったのか同じクラスの忍足に目撃された。
「謙也さんには関係あらへん」
「ひどっつか辛辣ー!なあ名前」
落ち着いた財前と違い、彼は明るくムードメーカーで緊張していた名前の表情は和らいだ。
「実際付き合ってたりせんの?」
「ただの先輩すけど」
『う、うん!先輩後輩ってだけ』
「そうなんや。じゃ、俺もう帰るから!また部活でなー」
ひらひらと手を振り去って行く彼に手を振り返すと、腕を引かれ教室へと連れられた。
『いた…なんで』
「先輩後輩てだけねえ」
基本表情を崩さない彼だが今は怒っていることが見てわかった。
「あの日のこと忘れたん?先輩はただの後輩とあんなことできるんな」
『だ、だって財前くんも…』
「俺は…あんたのこと思って勘違いされんように…」
―俺の片想いに巻き込まないように
行き場のなくなった彼は壁へと追いやっている名前に口付ける。
「思い出さん?保健室で俺らは…」
忘れるはずもない、あの日。
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「…拒否るんやったら今のうちですけど…本当にええん?」
頷く名前に頷き返し、ゆっくりと腰を進める。
『あっっ…』
「痛かったらすぐ言うて」
『ん、大…丈夫…』
呼吸に合わせて、何とか押し進め入れ込んだ。
「…優しくするけど…はよめっちゃくちゃにしたい」