3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第3章 昼休憩
「じゃあ今日はここまで」
四限終了の鐘が鳴る。滅組で歴史を教えていたはチョークを置いて教科書を閉じた。
「日直の甘露寺さんと悲鳴嶼くん、黒板頼めるかな?」
教科書一式をトントンと纏めながらが聞けば、机の上を片付けている二人がそれぞれ顔をあげる。
「は、はいっ!お任せあれっ!」
「………承知した。任されよう」
甘露寺さんは頬を染めながら胸にどんと拳を当て、悲鳴嶼くんはじゃらじゃらと数珠を擦り合わせた。
「ありがとう。二人ともよろしくね」
(………ああっ、先生ったらどうしてこんなに可愛いのかしらっ……罪だわっ!)
ハートを飛ばしている甘露寺に今日も気付くことなく、は教科書を脇に抱えて早々と教室を後にする。
食堂や売店へと向かう生徒達でごった返す廊下。はその人混みの中を縫うように足早に歩きながら、あっという間に職員室に辿り着いた。
昼休憩、それは教師のにとって貴重な休息の時間である。
通常なら受け持っている授業が入っていない時、職員室やそれぞれの準備室で各々自由な時間を過ごすのだが、日々問題児の滅組のために全教科を教えて休むことなく働くにそんな時間は存在しない。
そう。唯一あるとするなら昼休憩のこの時間だけなのだ。だからは毎日この時間を貴重としている。
「おや、お疲れのようだね」
自分の机の上でだらんと突っ伏していると、職員室に戻って来た校長先生がそれを見て笑う。
「産屋敷校長先生……!」
急いで体を起こして軽く会釈をする。この人は産屋敷耀哉校長。鬼滅高校を一人で立ち上げて短期間で文武両道を実現させた上、都内屈指の進学校に育て上げた凄い人だ。
「滅組の子供達とは上手くやっているのかな?」
「あ、あはは、どうでしょう……」
は苦笑しながら机の上にお弁当を広げて言葉を濁す。