第3章 ◇2話◇帰ってきた天使
夕飯が終わり、昼間の掃除で疲れきった身体を調査兵達が休めようとしていたときだった。
古城の中にいても眩しくて目を瞑ってしまうほどの光が、辺りを包んだ。
それは十数秒続いて、驚いた調査兵達は何事かと窓から外を見た。
最初に見つけたのは誰だったかはもう分からないが、夜空から何かがゆっくりと落ちてきていることに気づいた。
調査兵達はすぐに階段を駆け上がり、それが落ちてくるだろうバルコニーに飛び出した。
闇夜を照らす月の下、それは眩しいくらいの光に包まれいて、思った通り、このバルコニーに向けてゆっくりと落ちてきていた。
「何だろう、何だろうっ!?
エレンが巨人化するときの光に似てたよね!?
もしかして、巨人の赤ちゃんが産まれる瞬間とか!?」
巨人オタクと名高いハンジが、ワクワクした顔で落ちてくる光を見上げている。
その隣では、モブリットが不安そうに光を、いや、ハンジの方を見ている。
アレが何だったのだとしても、明日からのハンジが穴があくほど調べ始めるのは目に見えている。
「天使?」
ペトラが呟くように言ったのに続いて、他の調査兵達からも同じような言葉が漏れだした。
光に包まれた中に、白い何かがゆらゆらと揺れているのが見えたらしいのだ。
それが、天使の羽に似ていたと言う。
「ねぇ、リヴァイは何だと思う?巨人の赤ちゃん?天使?」
ワクワクしながら訊ねるハンジの隣で、リヴァイは食い入るように光を見上げていた。
いや、細めた目で、光の中にある何かを必死に探っているようだった。
こういう異常事態が起きてもいつも冷静で現実的な男なだけに、リヴァイのその様子はとても意外だった。
リヴァイは、数秒そうしていた後、何かに気づいたのか、ゆっくりと目が見開いていったかと思ったら、急に駆け出した。