第18章 ◇17話◇兵士の記憶(前編)
「さん、意識ないんですか!?」
「嘘だろ…、マジかよ…。なんで、よりによってが巻きこまれちまうんだよ…っ。」
「さんって、エレンを守るために死んだんですよね…?」
「おい、聞こえてるかもしれねぇだろ、余計なこと言うんじゃねぇ!!」
「す、すみません…っ!でも、エレンを守るために死んだはずのさんが、
なぜか生き返って戻って来てくれたのに、またエレンの巨人化に巻き込まれて死んだら、
もうリヴァイ兵長、壊れてしまうと思って…。」
「エレンは殺処分かもな。さすがに殺すだろ、リヴァイ兵長も。」
彼らがしているのは、この世界のが死んだときの話だろうか。
任務中の戦死のようだったけれど、そうか、エレンという誰かを守って死んだのか。
誰かを守って死ねるなんて、は本当に強い女性だ。この世界で最も強いらしいリヴァイの恋人なだけある。
エレンー。
誰だろう、そのエレンという人は。
あぁ、頭が痛い。もう、嫌だ。こんな世界、本当に最悪だ。
身体も痛いー。
「さん!!ごめんなさい…!!さんっ、俺…!!」
怒号が飛び交う中で、悲痛な叫びが聞こえた。
その向こうで、エレンを殺せと誰かがしきりに繰り返している。
それも1人ではない。
何人もが、エレンを殺せとー。
「ん…っ。」
「さん!!意識が戻った!!医療兵はまだか!!」
ゆっくりと目を開く。
私の上半身を抱え上げて、医療兵はまだかと叫んでいる調査兵の向こうに、大きな腕が見えた。
前にハンジに見せられた巨人のように肌色ではなくて筋肉や血管がむき出しになっているけれど、大きなそれは巨人の腕だ。
アレが私を殴ったのかー。
怖くて逃げたいのに、恐怖で動けない。