so ist es immer【Levi dream】
第2章 girl of hope for mankind
ハンジはリヴァイの小さくなっていく体を眺めつつも自分の目は金色の少女を追っていた。神秘的な彼女は真っ黒で焦げ臭い部屋の中でせっせと他の兵士と同じようにリヴァイの命令で掃除していた。これは掃除するの大変だなあ……と苦笑いを零したハンジだが手伝う気は毛頭ないらしい。何よりハンジは掃除と風呂が大嫌いだ。
「ジゼル!此処、拭いておいてくれないか?」
「あ、はい!分かりました。えっと、ここにある雑巾使ってもいいですか?」
「勿論だ」
そんなやり取りをしながら兵団の中でも馴染んでいくジゼルにハンジは部屋の窓に顔をくっつける。顔全体が潰れたような形でハンジを見た部下が恐怖に顔を引き攣らせているがなるべく上官と関わりたくないのだろうか、特に相手は奇行種、ハンジ。みんながみんなその視線がジゼルに向いていると理解した途端敬礼をしながらもハンジからさっ、と離れる。
「あージゼルったら、かわいいなぁ!!今日も可愛い、天使だなぁ!!」
そう言いながらぶちゅ、と窓とキスするような体制を取ったハンジにそろそろ兵士達が耳打ちしていく。ハンジの視線がジゼルに向いていることなどわかっていた。確かにジゼルは何をしていても愛らしくその裏表がない言動に時には癒される。だが、正直。エルヴィンもリヴァイも近寄り難いがハンジに関してはなるべく、関わりたくない。というのが正直な本音であり。
そんなハンジの情熱な視線すら気付いてないジゼルに頭を抱えた兵士は膝が汚れるのも気にせず膝を床に着けて床掃除をしているジゼルの小さくて華奢な肩をトントン、と叩く。
「もう掃除はいい。ハンジ分隊長が来てるよ、ジゼル」
「……?」
くるり、と振り返った拍子に金色の絹糸のような髪がふわり、と揺れる。そんな光景を見詰めていたハンジとジゼルの視線が合う。ジゼルはぱあ、と嬉しそうに笑いながらぺこりとお辞儀をした。するとなにやら兵士と短い会話を繰り広げたジゼルはにこりと微笑み雑巾を兵士に返した後こちらへと歩いてきた。
「ジゼルゥウウウゥゥゥ!可愛いよ!天使だよ!!ふぐっ!」
「おい馬鹿、何してるんだお前は」
頭上から降ってきたリヴァイの手加減のないげんこつにハンジがいってー!と悲鳴をあげる。先程の話を終えた後、いつまでたっても階段を下りてこないハンジにリヴァイの頭の中で嫌な予感が過ったのだ。