so ist es immer【Levi dream】
第1章 in the light of the earth
ピクシスさんは父と古い仲だ。あたしの知らないところであたしの知らない事情があったのかもしれない。此処に閉じ込めたのもなにか理由があるのかもしれない、と頭をあげてくださいとピクシスに頼んだ私だったがそれは受け入れては貰えないようで。
「お主に背負わせてしまった苦痛に比べればこんなもの安いものじゃ」
「っ」
「よく、よく数年間もの間耐えてくれた」
「……何度命を経とうとしたのか、数え切れません」
「…………」
「心が、体が、既に限界を迎えていました。日光も当たらず朝なのか夜なのかすらも判断がつかないこの異様な空間にギリギリのところで人間性を、理性を保てていた…。誰をなんの目的で待っているのかすらも分からずいつこの地獄から抜け出せるのかも分からず、こんな所にいるくらいなら命を経って死んだ方がマシだと、何度思ったのかももうわかりません…」
「……そうじゃな」
「だけれどもう、いいんです。父がどんな理由であたしを此処に閉じ込めていたのかはまた落ち着いてから聞きます。ピクシスさんが迎えに来てくれた、それだけでもう、心は救われます。数年間もの間耐えて耐えて耐え抜いて待っていたかいがあったと、貴方は教えてくれました」
「……儂はこれからお主を養子として預かる気でおる。アシュリーの遺した忘れ形見、儂がどうか責任を持ってお主を立派に育てあげるつもりじゃ。お主は、どうじゃ?」
やっと頭を上げたピクシスは後ろに手を組み長い廊下の階段の上にいるあたしを見上げる。ドット・ピクシスの瞳に映っているあたしは酷く困惑しているようにも見えた。息を、飲む。
「地上に、出てもいいのですか」
「……勿論じゃ、今の今まで出来なかったこと全て儂が叶えさせてやる気でおる」
「……っ!」
その言葉になにかが途切れる。プツリ、と切れた小さな理性は呆気なく破壊した。酷く張りつめた精神から開放されたその瞬間、何年もの間待っていたその言葉に溢れる涙が止まらなくて。
「……うぅっ」
嗚咽を出しながら泣くあたしをピクシスはただひたすら親が子供を見る時のような優しくて、暖かい眼差しで見詰めていた。そんな時だった。あたし達のこの雰囲気を呆気なく変えてしまった人物の声がしたのは。
「……これは一体どういう状況だ」