第6章 那田蜘蛛山にて
淳一は大きく息を吸って、心の中で唱えた。
夢の呼吸 拾壱ノ型 幻夢疾走
炎のように燃える情熱のような幻を刀にまとったように、淳一は赤い糸を切り抜けて、累の前にたどり着いた。
「本物の絆は、そう簡単にへこたれない!」
彼は見事に、累の首を切った。
淳一は急いで彼女の刀を手離した。手の痺れが尋常ではないのだ。鬼が日輪刀を握るのは難しかったのか?
そして、彼は花怜のところに駆け寄る。急いで隊服を脱がせ、傷口を舐めた。糸で出来た穴は、綺麗に塞がれた。
「へぇー、人の怪我を治せるんだ」
振り向くと、累が自分の首を持って立っていた。倒したはずなのに。
「自分で首を切ったんだ。死にたくないからね」
累は自分の首を付けた。そして、赤い糸が彼らに襲いかかって来た。
誰かが糸を切ったのか、糸はバラバラに落ちていった。
「俺が来るまでよく堪えた。後は任せろ」
そこに現れたのは、花怜がよく話していた冨岡義勇だった。
義勇は、美しくも速い剣捌きで、すんなりと累の首を切った。
淳一は疲れ果て、瞳の色も黄緑色に戻っていた。