第1章 ◆夢 碓氷真澄
「……それで怖くなっちゃったの?」
「……」
コホン、と一つ咳払いをいれて、改めて聞かれた。
素直に頷いてしまえば、更に子供扱いされる気がして、黙ったまま、監督の肩に寄りかかる。
ベットの縁に座ったまま、起き上がった状態の監督に寄りかかったので、まるで前から抱きついている様な形になった。
監督は、そのまま俺の後ろに手を回し、まるで母親が子供あやすように、背中をトン、トンと叩きながら話し始めた。
「………私は、真澄くんのことが好きだよ」
「……知ってる」
「ふふ、そっか。そうだよね。
…だからこそ、私は、この関係を大切にしたいとも思ってるの。
……私だってね?いい年した大人だから、やりたいことを我慢してるところはたくさんあるんだよ?
だって、私がもし選択を間違えてしまったら、私と真澄くんは引き離されるかもしれない。
引き離されずとも、白い目で見られるかもしれない。
心のない言葉を掛けられるかもしれない。
そうなって、辛い思いをしたくないし、させたくもない。
だから、真澄くんが高校卒業するまでは、シないって言ったの」
「…俺はそれでもいい。
俺には、アンタしかいらない」
「……それは、違うんじゃないかなぁ…」
「っ何で…!!」
「……真澄くんには、もっとこれから、沢山の出会いがある。
その中で、私よりも好きになれる人がきっと見つかるよ」
ショックだった。
あんなに好きだと伝えているのに、俺の気持ちを信じて貰えていないみたいで。
俺にはこの人しか居ないのに。その気持ちすらも無碍にされたみたいで。