第10章 影との遭遇
だって…どうすれば良かったの?
あの時はカカシさんだって思い混んでいて…というか…分かっていたって…
…──今だって目の前にしたら、見分けなんて付くかどうかだって 分からないのに…っ
放心したようなカカシさんに触れられないでいる私を、サスケ君の瞳が悲し気に見つめている。
「お前が気にする事じゃない」
そう言ったサスケ君の言葉に、カカシさんが顔を上げた。
だが抗えない事実が、私達の目の前に突き付けられていた。
「…そうだ…君は、悪くない…
ごめん…っ…夢だなんて言って…!
俺が…っ…気付いていたら…こんな事には…っ
────悪いのは俺だ…っ」
そう言って自分を責め
突き付けられた目の前の事実に苦しんでいるカカシさんに、胸が張り裂けそうになる。
カカシさんは…カカシさんこそ…
────何も、悪くない…のに…
「そう悲観するような事でもないだろ
こいつはお前だと思って身体を許した
お前が抱いた事とさして変わりない」
「そんな単純な事じゃないでしょ!?
────この子は…
俺に抱かれたと思ってるからまだいいけど…
…俺からしてみたら…
まるで他人に寝取られたような心境、だよ…っ」
らしくないカカシさんを前に、サスケ君も流石に目を泳がせた。
「…分かった…
…事情は話した。
俺は少し席を外そう、後は2人で話せ」
「…ああ…
すまない……サスケ……それから…
俺は……お前を、暫く疑った……
──…許してくれ 」
カカシさんの正直な告白に
サスケくんも一瞬動きを止める
「言っとくがな…朝俺が言ったことは、忘れるな
俺がこいつに惚れてる事は紛れもない事実だ
────だが…
こいつは…お前が好きで、どうしようもないウスラトンカチだ。
よほどの事がなければ、お前を裏切るような事はしない。
悲しい程にな」
サスケ君の言葉に、カカシさんが微かに苦笑いする。
「そんな事…言われなくても分かっているよ
お前には悪いがな
この子は譲らないよ…絶対にね 」
そうしてまた、無言で見つめ合う。
「少しは頭を冷やして的確な判断を下せ
────でなければお前を火影として見限るぞ」
最後にそう言い残して
サスケ君は、玄関から出て行った。