第9章 任務
『待って…っ!!
…ねぇ、降ろして…っ!』
サスケ君は私を抱え 凄まじいスピードで里の屋根から屋根へと移動して行く。
まるで突風に乗って過ぎ去るように流れて行くその景色に、私が目をぐるぐるさせている横で…
彼は顔色一つ変えず、息も乱さない。
密着した身体は、予想していたより遥かに逞しく…思わず動揺してしまう。
筋の見える力強い腕が、
私にぐるりと回されている事にも…
意図せず、心臓が高鳴ってしまった
…と、突然逞しい胸板に顔が押し付けられ…そこから仄かに石鹸の香りがした。
瞬間、クラリとする。
何だかおかしな気分になってしまい、羞恥に駆られた。
「おい!ちゃんと捕まっていろ
振り落とされるぞ!!」
『…だ…だって…っ
──…もうっ!…』
(何でこんな…
ドキドキするの…サスケ君相手に…)
…が、仕方なしに彼の首筋に遠慮がちにしがみ付く。
とその綺麗な顔が、息の掛かりそうな距離で 安心したように微かに微笑んだ。
『…っ…!』
(…ダ、ダメだ…!
もう、心臓が持たない…)
クラッとしないと言った昨日の自分の首を
いっそ絞めてやりたい気分になった。
5つも歳下のサスケ君相手に こんなにドキドキして…
昨日まで子供の頃のままだと、思っていたのに…
昨夜告白を受けた事で 思い切り異性として意識し初めている。
そんな自分の心の変化にも、困惑してしまう。
(…っ…ご、ごめんなさい!カカシさん…っ!)
気付かぬ内に魅力的に成長していた彼に、たった今気付いてしまった。
(もうちゃんと…男の人、なんだな…)
そんな私の戸惑うような視線に気付いたサスケ君が、動揺するこちらの胸中も知らずに口を開いた。
「…突然悪かった
恐らくお前があの場に居たら
カカシは冷静な判断を下せない
それよりこちらで事態を把握した方が早い…と思った
…あいつは、少し頭を冷やすべきだろう」
『…だ、だからって…っ』
それでこれ…と言うのも、
中々に、極端な気がするのだが…
ただ今の彼は見るからに冷静で、少なくともこの状況の中…カカシさんより正確に事態を把握していると、言えなくもない。