第5章 サスケの想い
私の顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていた。
止めどなく溢れてくるそれを、戸惑うようなサスケ君の指先が拭って行く
『…っ…』
私はその優しい手の温もりを感じながら、また子供みたいにしゃくり上げてしまった。
もう自分ではどうしようもなく、涙は止まらない。
拭ってもまた頬を濡らす私に、
サスケ君が目に見えて動揺しているのが 分かるのに…
「…花…」
ただ私は初めて直にサスケ君の苦しみに触れ、心が張り裂けそうだった。
ナルト君やサクラちゃんは
ずっとサスケ君の経緯を見てきた。
…2人にとって、そしてそれを見守るカカシさんにとって…どんなに辛い5年間だったのだろう?
ましてサスケ君が闇に囚われていた苦しみは、自分をそこまで追い込まなければいけなかった苦しみは…里でその成り行きだけをただ見守っていただけの私には計り知れない。
…その苦しみを…実感出来ていなかった事が悔しくて、情けなくなった。
「なぜ…泣く…
あんたのそんな顔、見たら…俺は…」
サスケ君が戸惑ったような表情を見せ
私の顎をそっと上向かせる
『…?…』
…と…、
その驚く程整った顔が切な気に歪み
…ゆっくりと近付いて来た。
瞬間、ハッとしてしまう
(…キス…され、る…?)
そ、それは、ダメだ
私には、カカシさんが…っ
咄嗟に避けようと身体を硬くし顔を背けた瞬間、すぐ横に 身近な人の気配が現れ、サスケ君の手が私から離れる
それに気付いて顔を戻すと、
腕を掴まれたサスケ君の顔が痛みに歪んでいて…
「くっ…カカシ…!?」
「何やってるの?
2人とも…こんな所で…
サスケ…この人は俺の奥さんだよ
───もしかして、知らなかった?」
優しげに言うカカシさんの目は
笑ってはいなかった
『か、カカシさん…?!』
その頃家の時計が丁度、午前0時を指していた事を……私はまだ知らない。