第19章 芽生えた気持ち(3人視点)
──1日目
『…い…っ』
まただ…
くらりと視界が揺れて思わず机に手を付き、こめかみを押さえる
先程から定期的に来るこの頭痛…段々と感覚が狭くなっている気がする
(やっぱり風邪かな?今日はもう無理をしない方が良いのかも…)
そんな事を考えつつも段々と鋭くなる痛みの中、俄かに視界が霞み始めた。
『…っ…』
これは不味い、かも──…
よろけた私の身体を咄嗟に支えてくれたのは──…なんとカカシさんだった
「花ちゃん!」
『え、カカシ…さん?』
(ああ、一足、遅かったのか)
どうやら私の送り出した影分身は、カカシさんが来る前には到着してくれなかったらしい
わざわざ来てくれた事に、申し訳ない気持ちと嬉しさがないまぜになってしまう
『はぁ…御免なさい、カカシさん
わざわざ…来てもらって…』
「そんな事はいい!
それより顔、真っ青じゃない!
こんな状態で仕事なんてするんじゃないの!
もう帰って、休みなさい!」
『…は、い…』
確かに、その方がいいかも知れないと思い始める。
ダメだ…意識がまた朦朧として…飛ばした影分身ももう維持できそうにない
「ちょ…っ…花ちゃん?!
花ちゃん!!?」
カカシさんの顔を見たら安心して気が抜けてしまった。
薄れ行く意識の中、愛しい声が遠のいていく
────…
コンコン──
叩かれた扉に曖昧な返事をする。
仕事に集中出来ず、俺はいつになくイラついていた。だが返ってきた声に咄嗟に顔を上げる。それは俺の耳に、よく馴染んだものだったからだ
──ガタッ
書類を放り出して立ち上がり駆け出すと自ら扉を開ける。そして驚きで目を見開く彼女を力一杯抱き締めた。
『…ご心配をお掛けしました』
「はぁ──全くだよ…」
「はい、今日のお昼です」そう言って笑った妻が差し出してくれた包みを、俺はホッとした気持ちで受け取った
「──…大丈夫なの?ねぇ何があったの?
動いたりして、平気?」
矢継ぎ早に飛んでくる俺からの問いに、花ちゃんは苦笑いを浮かべている。
だが何か言おうと口を開いたその瞬間、彼女は唐突に姿を消してしまった
(あ…影分身、だったのか)