第14章 対峙(サスケ視点)
────…
妖艶な色を纏った薄紫色の霧はこの家の真正面に突如として現れた。
それはまるで幻影の様に瞬く間にカカシの姿を形作ると、跡形もなく奴の周りで霧散する。
標的が動き出す。
俺は家の敷地に足を踏み入れそうになるそいつの背後を取ると、静かに首筋にクナイを押し当てた。
「…っ…」
「何者だ…目的は?」
至近距離から写輪眼で見据えると、その技の全容が頭の中に術式として入って来る。
…こいつは色の忍術を纏った…幻術で作り上げられている…
(こんな術が…あるのか…)
自然と理解する。こいつは実体ではない。
術者は側にいる。それが写輪眼によって示されている。
その術者は…
十中八九、花で間違いないのだろうということも。
その事に思い至ると、一瞬気が緩んだ。
(…あいつに、害はない…のか?)
がその一瞬の油断を逃さぬ様に、クナイを持つ手が影の手によって逆手に掴まれてしまった。
驚くべき素早さで腕から擦り抜けられる。
(…何、だと?)
「とんだご挨拶だな、サスケ」
一瞬の内に回り込まれると、腕があらぬ方向に捻られ痛みが走った。
(く…っ、油断した)
間髪入れずに逆回転すると、自身の腕を解放しそこから飛び退く。
すると次の瞬間 目の前に瞬身して来たカカシに気付く
強烈な右からの蹴りを腕で受け止めるが、思わず顔を顰めた。
(…重いっ…)
それは想定していたモノとは明らかに違う…
不味いと思った時には呆気なく詰め寄られ、腹に更に重い一撃を食らってしまう
「くっ…」
(…っ…こい…つ、は…)
写輪眼の動体視力で見切れない動きなどほぼ無い。なのにコイツの拳を見切る事が出来なかった。明らかに格上の相手ならいざ知らず…
本当に…カカシ…なのか?
超えたと思っていた存在がまた大きな山の様に目の前にそびえ立っている気がした。
首筋には先程自分がした様に、すっとクナイが押し当てられる。
「お前は……っ」
明らかに本体よりも動きが速い。攻撃も、重い…
そして固まる。
俺と同じ赤い瞳に見下ろされていたからだ。
(…写輪眼…っ…だと?)
ふざけるなよ、花…っ