第13章 守りたい想い(カカシ視点)
家の中に戻ると心配そうな顔をした花ちゃんがこちらに顔を向けた。
俺は彼女に笑顔を向け、その隣に腰掛ける。
「心配しないで
サスケにはちゃんと話してきたから」
『…はい…』
「後は待つだけ
安心して──…俺も側にいるし
外にはサスケもいる」
そう言って肩を抱くと彼女は笑顔を見せ、そっと寄り添ってくれた
愛おしいその体温を感じると不思議と安堵する。
この子の存在がいつも
俺の精神を安定させてくれる。
子供の時以来────
俺は初めて満ち足りた気持ちで暮らしている。
まだ両親がいたあの頃の様に
暗い場所から長い事動けずにいた自分に、やっと見えた一筋の光────それが彼女だ。
『あの…怒ってなかったですか?
…サスケくん』
愛おしさが込み上げて、つい彼女の頭を抱き寄せそのこめかみに唇を押し当てた。
「まぁね…
ちょっと…呆れられた、かな」
『……』
頬を染め溜息をついた彼女には、心底申し訳ない気持ちになってくる。
自身の中に巣食っていた負の感情を抑えきれず、先程は……酷く傷つけてしまった。
なによりも大事な人の筈なのに…傷つけたくなるなんて、我ながら呆れる。
サスケが感情的になったのはそのせいもあるだろう…
(…ホント…何やってんだか…)
自分が実の所弱い人間なのだという事を思い出す。
常に冷静に立ち回れる、などとなぜ自分を過信していたのだろう。
ただ任務を淡々とこなして来たあの頃とは違う──…俺は、また失いたくないモノを得た。
側に置く事を、自ら選んだ。
それが諸刃の剣だという事は分かっている筈だ。
それはこんなにも幸福で…同時にこんなにも不安な事なのだ、という事も。
長い事闇の中で復讐心に囚われ、歪んだ思いにのみ生きる道を見出していたサスケの事を思えば、今回の事は寧ろ…喜ばしい事かも知れない。
人間らしい感情を表に出し、向き合おうとしているのだから。
この子が俺の事を愛してくれている事には自信があるし、いくらサスケ相手とは言え 取られるなどとは本気で思ってはいない。
(…大人の余裕で構えていれば良いじゃないか…)