第12章 邪念(サスケ視点)R18
────…
部屋から出た俺はそのまま屋根の上に移動し腰を下ろす。
これからこの家の中で行われるだろう事を考えると…冷静でいられそうに、ない。
直ぐに気配を消し 家の周りに異常がないかに鋭く注意を配りながら、自分の心が…まるで星の見えない今夜の空の様な──…漆黒の闇の中に沈み込んでいくのを、静かに感じていた。
(…何をしてるんだ…俺は…)
あんなに理性を欠いたカカシを初めて見て…らしくもなく気を使うとは…
(…少しは変わったのか…あいつは…
──…花を愛して…)
共に任務に赴く先々で、カカシは度々人目を盗み────…どこの誰とも分からぬ女を抱いていた。
ナルトやサクラは恐らく気付きもしていなかっただろうが…
かつてのあいつは、後腐れのない そんな関係を好んでいたように見受けられた。
それ故か、里の女に手を出すところは見た事がない。
里ではまるで女の影を見せず、悪びれた様子もなく…
常に…飄々としていた。
────…腹が立つ程に…
花をずっと見てあいつを想っていた俺は…そんなあいつが、許せなかった。
(…偽善者だと…そう思った…)
真っ直ぐな想いを花から向けられて…尚…それに気付く事もなく、戦闘で昂った性欲を2度と会う事のない女相手に発散する。
当時のカカシの瞳の中に…俺は自分と同じ闇を見た。
あいつにも俺と同様に…抱えている闇がある。
特定の女を作らない原因は、そこにある気がしていた。
その闇を周りに分かりやすく吐露する事はしない。
一見、人当たりよく振る舞ってはいる…
…だが、
以前暗部にいた…と言う事にも、俺には納得がいった。
────…
その内壁の内側からくぐもったような
────…花の嬌声が漏れてきた。
「…っ…」
俺は目を瞑り、それに耐える。
時間が…酷く長く…感じられた。