第3章 独占欲と罠
*轟side
その日の夜、寮で文化祭の準備をしていると、麗日と葉隠がニヤニヤと笑いながら声をかけてきた。
「ねーねー、轟くん!」
「...何だ」
「うふふ、今日ね、他のクラスの子から面白いものが送られてきたんだけど、見たいー?」
「....?」
状況が飲み込めていない俺を見て、2人は悪戯を企む子供のようにニヤニヤしている。
「何だ何だ?俺らにも見せろよ!」
ソファに座っていた切島と上鳴も割り込んできた。
近くにいる爆豪は何も言わず、怪訝な顔で様子を伺っている。
「これって、轟くんとちゃんだよね?」
ニヤケ面の麗日が、大げさな仕草で携帯を掲げる。
画面に表示されているのは、ある写真─俺とがキスをしている写真だった。
「...っ!?」
「美男美女の戯れ、微笑ましいねぇっ」
麗日が画面をスワイプすると、次は、俺がの頭を撫でている写真が表示される。
不覚。あの時、撮られていたのか...!
体の力が抜けた俺は頭を抱えてその場にしゃがみ込むことしかできなかった。
「いやはや〜、轟くんってこんな顔するんだねぇ!ちゃんの頭ポンポンしてる写真、珍しく笑顔だ!」
「やるな轟〜!お前も相当有名だけど、もかなりファンが多いからな、学校中ざわつきそうだな!」
「...良い度胸してんじゃねぇかキスロキ君よぉ。
学校で発情してんじゃねぇぞ。....ぜってぇ殺す。」
麗日の言っていることは全くの図星で、写真の中の俺は我ながら情けねぇくらいに穏やかな笑顔を浮かべている。
どう見ても、完全に惚れているやつの表情だ。
「....頼むから、あいつには見せないでくれ...」
「なんか初めて轟の弱みを見たって感じだな!」
「クールなイケメンの意外な一面だね〜!」
「...わりぃ、俺、少し部屋で休憩してくる。それと....麗日。」
「なに?轟くん」
「....その写真、俺に送ってくれねぇか」
「....!」
恥を殺して依頼した俺の気持ちなどつゆ知らず、クラスの奴らは更に能天気に騒ぎ立てた。
あいつには絶対に見せないが...黙って盗撮させてやったんだ、
写真くらいもらってもバチは当たらねぇだろう。