第3章 ③新門紅丸 甘
今日も今日とて、浅草は騒がしい。毎日毎日、祝言はいつだの。やれ、孫だけ見せろだの。どこもかしこも喧しい。
私と若が付き合い始めたのが、1ヶ月前である。
そんな簡単な話なら、世の中難しいわけがないでしょ。
いつの間にか若から猛アピールをされたのが2ヶ月前。確かに、いつもより妙に距離が近かった。朝イチで、私のところに来て後ろに引っ付いていたし…鍛錬をするために外に出れば、待ってましたと言わんばかりの若がいる。風呂上がりには、首筋に顔を埋めて「…良いニオイだ」なんて言葉が出れば、私だって意識してしまうワケで…
もうやられっぱなしの1ヶ月だった。本当。間違えようもなく。私の完敗で、若の押しに負けを認めて付き合ってしまえばトントン拍子に事が進んだ。ずっと守ってきた処女も若につい最近頂いてもらったばかりだ。もうそれからは、スキあらば胸を触ってきたりキスをしようとしてくる。(いや、しようとではなくされている)
しかし、私達が付き合ったことで町の人達がお祭り騒ぎになったことに関しては、大変だった。
毎日酒盛り。若のあの表情筋が崩壊した顔には、笑いを堪えるのが大変であるのは間違いではない。
『紺炉さん、買い出しはこれだけですか?』
「悪いな。この間からの酒盛りで、足りないモノが出てきちまって…」
『いえ、こちらこそご迷惑をおかけして…』