第11章 ⑪相模屋紺炉 甘 ⑩の続編
あの記憶喪失の事件から、1ヶ月が経って大変なことがわかった。月のモノが来ていない。あの事件の時期に来るものだとばかり思っていたが、全く予兆さえない。胸の張りはあるものの、いつものソレには程遠い。
『どうしたものでしょう』
悩んだ。これは、お医者さまに相談するべきか否か。
そこへ第七の詰所へ大福を持っておばあさんが来たところだった。もういつまでも悩んでいることにストレスを感じてしまい、おばあさんにコソッと聞いた。すると、それはすぐに産婆さんに聞いた方が良いとのことだった。
さんば…サンバ…産婆とは、あの…
「お!また大福もってきてくれたのかい?」
『はひぃ!』
「どうした?」
『そ、そそそうなんです。私、ちょっと買い出しに行ってきますね』
「あ、あぁ、気をつけてな」
とりあえず、このままではマズい。非常にマズいです。
紺炉さんの不思議そうな声が聞こえたが、買い物籠を持ち外に出た。
あんなのいつもの私ではない。あんな私は、紺炉さんの側にいてはいけない。もっと冷静でなければ…
「あら、ちゃん。そんなに急いでどうしたの?」
「紺炉さんは一緒じゃないのかい?」
「元気になってよかったよ!」
こんな状況で産婆さんのところに伺ったら、浅草の人達にバレてしまう。そうなったら、紺炉さんにも迷惑に…
結局、買い物だけして詰所に戻ってきてしまった。
「おう、いいのはあったかい?」
『…はい。今日は、美味しそうな大根が…』
その瞬間、目眩に襲われた。
「おい!」
そんな焦った顔を見たことがない。そういう顔もするんですね。あなたは