第8章 運命論者の悲み
──はっ
良くない夢を見ていた敦はパチリと目を覚ました
「ここは······」
「気づいたか。全くこの忙しい時に······」
見慣れぬ景色の中横には椅子に腰を掛けている国木田
"珍しく眼鏡を頭に掛けている"
「僕 マフィアに襲われて それから······」
そこまで云ってあることに気づきハッとする
「そうだ!谷崎さんにナオミさんは!?」
「無事だ。隣で与謝野先生が治療中」
ギャァアァアア
云い終わるや否や響く谷崎の絶叫
「······治療中?」
「聞いたぞ小僧。七十億の懸賞首だと?出世したな、マフィアが血眼になるわけだ。」
「そうです!どどどうしよう マフィアが探偵社に押寄せてくるかも!!」
「狼狽えるな」
狼狽する敦に国木田はしれっと応える
「確かにマフィアの暴力は苛烈を極める。だが動揺するな。動揺は達人をも殺す。師匠の教えだ」
然し敦は国木田の手元を見やり
「あの······手帳さかさまですよ」
その言葉に丁寧に手帳を回し
「俺は動揺していない!」
ガタッと席を立つ国木田
「マフィア如きで取乱すか!仮令 今ここが襲撃されようと俺が倒す!」
(国木田さん相当焦ってる······)
「あれをこうしてこうばしっと動きいい感じにぐっとやって倒す!」
云い乍ら
ビシッ
ばっ
とする国木田
(説明がワヤワヤだ···!それだけ探偵社の危機って事だ······僕の所為で)
「ふん。奴らは直ぐに来るぞ。お前が招き入れた事態だ。自分で出来ることを考えておけ」
(僕が······出来る事)
ガチャ
「ところで小僧」
扉を開けた所で思い出した様に振り返る国木田
「先刻から探しているんだが眼鏡を知らんか?」
───