第6章 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス
「探して、おりました。ずっと──貴女を···」
そう云い迷子の様に目を泳がせる芥川
そんな芥川に近寄りぎゅっと抱き締めた
『ごめんね。置いてって···ごめんね。』
「僕は、僕は貴女を──」
『ごめん、ごめん。』
するりと芥川から離れ"ごめん"そう繰り返す猗憐
そんな光景に驚愕する樋口
「猗憐」
『莫迦治······』
そう云い太宰の元へ行く
「芥川······先輩?」
樋口に呼ばれ芥川は我を戻し太宰達に目を向ける
「話の途中でしたね。人虎の首は必ず僕らマフィアが頂く。そして好都合な事に此処に猗憐さんがいる。·····猗憐さん。貴女もです。僕は貴女も連れて行きます。」
「なんで?」
「簡単な事その人虎には──闇市で七十億の懸賞金が懸かっている。裏社会を牛耳って余りある額だ。」
「へえ!それは景気の良い話だね」
「探偵社には孰れまた伺います。その時 素直に七十億を渡すなら善し
渡さぬなら──」
「"戦争"かい?探偵社と?良いねぇ 元気で」
「やってみ給えよ──やれるものなら」
「······ッ零細探偵社ごときが!我らはこの町の暗部そのもの!傘下の団体企業は数十を数え、この町の政治・経済の悉くに根を張る!たかが十数人の探偵社ごとき──三日と待たずに事務所ごと灰と消える!
我らに逆らって生き残った者などいないのだぞ!」
そう捲し立てる樋口
「『知ってるよその位』」
太宰は頭を搔き乍ら云い
猗憐は俯き乍ら云う
「然り。他の誰より貴方がたはそれを悉知している
──元マフィアの太宰さん。そして猗憐さん」
驚愕する樋口
「却説。もう一つ。何故猗憐を連れて行くのだい?」
黒い気を放つ太宰
「それも簡単な事。──猗憐さん···」
『見つけ次第······か···。』
「然り。なので」
『ごめんね。』
「······何故、ですか?」
『···此処が、······好きなの!』
そう云い笑顔で振り返る
その痛ましい笑顔を見て芥川は
「今の貴女は猗憐さんではありません···必ず連れ戻します。」
『ごめん。私はもう殺せない。殺したくない。』