第5章 或る爆弾
"「助けて 死にそう」"
「やあ 良く来たね」
朝から呼び出され外に出た敦は──
「早速だが助けて」
「え······?何ですかこれ?」
「なんだと思うね」
「朝の幻覚?」
「違う」
「えっと、その方は······?助けないんですか?」
「?」
「え?昨日一緒に居た人ですよね?え?」
「ああ。猗憐自己紹介まだみたいだよ」
『んー?あ、僕居たの?』
(えぇ?気付いてなかったのかこの人······)
『そーいやまだ掛かってたね。』
パチンッ
猗憐が指を鳴らすと敦の視界に写る猗憐の姿が明瞭になった
「え、えええぇぇえ!?だ、だだ誰ですか!?」
「『ふっ。ふはははは!』」
「この瞬間の皆の反応は面白いよ」
『あははは!ダメ、お腹痛い、ふふっ』
急に現れた·····いや写し出された姿は何故今まで気付かなかったのかと思う程だった
「美人だろう。いや、可憐かな?」
「いや、いやいやいや!え、えぇ?綺麗····可愛い?······っいや、違うな?え?」
言葉の見つからない敦
『ふふっ どーも!』
「ふう。先刻まで彼女の姿がハッキリしなかっただろう敦君」
「え?は、はい·····」
「彼女はこうなる事を読んで君に異能を掛けていたんだよ」
「異能?ずっとですか!?」
「ああ。私が彼女に触れていない間だけね」
『ふふっ いやぁー真逆これ程の反応だとは!敦くん面白ーい!ふふっ』
一頻り笑った後敦に向き直る猗憐
『じゃ、改めまして初めまして!
私は猗憐!兎神猗憐』
──風が吹く
あの時と同じ
──砂色のロングカーディガンがはためいた
「そろそろ限界·······助けて」