第4章 人生万事塞翁が虎
「おい 太宰!」
「ああ 遅かったね。虎は捕まえたよ。」
「!その小僧······」
足を止め敦に目をやる国木田
「じゃあそいつが」
「うん 虎の『能力者!』·······変身してる間の記憶がなかったんだね。」
「全く──次から事前に説明しろ。肝が冷えたぞ。」
ピラッ と紙出す国木田
『治これは分かりにくいよ······』
紙を一瞥し太宰に目をやる猗憐
「そう?」
恍ける太宰
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十五番街の西倉庫に虎が出る 逃げられぬよう周囲を固めろ
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「おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。
皆に酒でも奢れ」
「なンだ 怪我人はなしかい?つまんないねェ」
与謝野晶子 ーーー能力名【君死給勿】
「はっはっは 中々できるようになったじゃないか太宰。まあ僕には及ばないけどね!」
江戸川乱歩 ーーー能力名【超推理】
「でも そのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」
宮沢賢治 ーーー能力名【雨ニモマケズ】
「どうする太宰?一応 区の災害指定猛獣だぞ」
国木田独歩 ーーー能力名【独歩吟客】
「うふふ 実はもう決めてある」
太宰治 ーーー能力名【人間失格】
クスクス
『国木田くん怒鳴りそうだなぁ。私は賛成だけど!』
兎神猗憐 ーーー能力名【虚操人形】
"こんな奴がどこで野垂れ死んだって──
いや いっそ喰われて死んだほうが──"
敦を一瞥し目を合わせる二人
そして、
「『うちの社員にする』」
「はああぁあぁあ!?」
これが事の始まり──
怪奇ひしめくこの街で
変人揃いの探偵社で
これより始まる怪奇譚
これが先触れ前兆し──
中島敦 ーーー能力名【月下獣】