第1章 もう、泣かないで
「え、ちょ、待って!鬼殺隊が君をここに?なんで!?君は鬼殺隊員なの?」
「・・・ちがう」
「それじゃあどうしてこんな所に・・・」
「・・・私が、・・・逃げないように」
「っ・・・何で!?」
意味が判らない。
目の前の女の子から聞こえる音はどう聞いたって人間の物だ。
それならばこんな所に監禁されている理由なんて無い筈なのに。
理解できない理不尽をぶつける様に、思わず俺は牢に手を掛けた。
その弾みで、足元に置いた燭台が牢の向こう側へ倒れ、地面を照らす。
「・・・え・・・」
揺らめいた炎が照らしだしたのは、まだ乾いていない小さな血だまりだった。
そこから、点々と血が隅でうずくまる彼女へと繋がっている。
俺が見た物を、彼女は察したのだろう。
左手を庇う様にぎゅっと身体をさらに縮こませている。
「ちょっと!君怪我してるじゃないか!早く手当てしないと・・・」
急に牢の中に腕を伸ばした俺が恐かったんだろう、
びくっと身体を震わせた彼女の目から涙が零れ落ちる。