第1章 もう、泣かないで
「いきなりこんな夜中にごめんねぇ。いやぁ、俺って人より耳が良くってさ、さっき偶然君の声が聞こえてここに来ちゃったんだよ」
俺に敵意が無いのが判ったのだろうか。
さっきよりも少しだけ警戒が解かれている。
「俺には関係ないことかもしれないけど、目の前に牢に入れられて泣いてる女の子見て無視できる訳ないんだよ。君も療養中なの?どこか怪我してるの?痛い?」
目に見えて彼女は狼狽しはじめた。
俺が何か危害を加える様な人物だと思っていたのかな。
・・・つまり、彼女に危害を加える人間がいるって事か?
「ここには、誰に入れられたの?君の事を傷つける様な人がいるの?」
「・・・・い」
「え?」
「鬼殺隊」
泣き声ながらもはっきりと鬼殺隊と答える彼女を前に、今度は俺の気が動転する番だった。