第1章 もう、泣かないで
「え・・・」
俺には分からなかった。
何故、この屋敷にこんな場所が存在するのか
何故、この女の子はこんな所に閉じ込められているのか
何故、こんなにも怯えているのか
必死に声を出すまいと口元を抑えている手が震えている。
「え・・・あ・・・えぇ?」
泣き声の重すぎる正体に俺は混乱して間抜けな声が口からまろび出た
「あ、あのさ、そんな怖がらないで落ち着いて、ね?」
半分は自分に向けた言葉だった。
「えっと、あ、俺、俺の名前は我妻善逸。君は?」
この状況で返事なんて来るはずがない。だけど、声を掛けずにはいられなかった。
女の子が目の前で泣いている。自分と同じくらいだろうか。
理由なんてそれで十分だ。
折角放った第一声を無駄にしない為に、俺は言葉を続けた。
「君、なんでこんな所で閉じ込められてるの?え、俺ぇ?俺はさ、少し前に任務で怪我しちゃって。ここで療養中なんだよ。毎日毎日苦ーい薬飲まされてホント気が滅入るよ」
わざとにおちゃらけてみたものの、空気が重い。
相変わらず名も判らない彼女は涙を流し続けている。