第1章 もう、泣かないで
地下へ続く階段は、底の方からぼんやりと明かりが漏れていた。
誰か、いる・・・。
一瞬、お化けじゃないかと恐怖が脳裏を掠める。
「イヤ、何か恐いしやっぱ帰ろうかな」
そんな俺の心の声を遮るかのように、再び泣き声がする。
間違いない。声の主はこの先に居る。
かすかな明かりを頼りに階段を下りきると、そこは小さな地下牢だった。
明かりは部屋の入口のあたりに無造作に置かれている蝋燭からで、牢の中ははっきり見えない。
俺の侵入に気が付いたのか、牢の中の人物は必至で息を殺しているようだった。
足元の小さな燭台を取り、牢にそっと近づく。
「・・・誰か、いるの?」
そんな風に声を掛けてみたけど、返事は無い。
代わりに、恐怖で速度が増している心音が俺の耳に届く。
「そんなに怖がらなくても」
そう言いながら明かりを牢に向けると、牢の端で女の子が一人、涙を流しながら小さくうずくまっていた。