第1章 もう、泣かないで
そう諦めてから、俺は訓練場へ行く事をやめた。
誰にもとがめられることは無いけど、居心地の悪さを覚える。
毎朝炭治郎がいつもと変わらない風に稽古に誘ってくれるのも、正直胸が痛かった。
自然とため息が零れる。
身体の治療が終わったら・・・俺、どうしよう。
鬼殺隊を・・・
そこまで考えかけた時、伊之助の鼾の合間に小さく何かが聞こえた。
一瞬だけど、啜り上げる様な、少し高い音。
動物の声にしては、少し妙だった。
音が、屋敷の中から聞こえて来たから。
そう言えば、今日の昼間、隠が何人か来てたっけ。
妙に大きな箱を抱えて屋敷の奥へ素早く消えて行ったけど・・・。
あの時は特に気にする事も無かったけど、何か関係があるんだろうか。
眠れない頭の中から興味の芽が一旦芽生え始めると、気になって仕方がない。
退屈な日々を送っていたから尚更だ。
俺は寝台から起き上がると、極力音を立てないようにしてそっと病室を抜け出した。