第2章 絡まった糸は柔らかな手で解けばきっと
「小乃実ちゃん、ありがとう。俺、こんなに誰かに必要とされた事無かったから・・・」
俺の言葉の後に、沈黙が続く。
無理もない、長年ここに閉じ込められていた小乃実ちゃんはどうしてよいか判らずに戸惑っている。
「ねぇ、小乃実ちゃん。それじゃあさ、今日は小乃実ちゃんの事、聞かせてよ?」
「え、でも私の生活は・・・」
「そういうのは置いといてさ、好きな色や好きな食べ物。好きな遊びとか。辛かったら話さなくてもいいけど、こうなる前の生活とかさ。俺、小乃実ちゃんの事、何でも知りたいんだ。俺の事は粗方前に話したから、小乃実ちゃんの番」
俺のこの提案に少し戸惑いを見せていた小乃実ちゃんだけど、話を聞く者がいる安心感からか、途切れ途切れながらも彼女の事を知ることが出来た。
和やかな雰囲気の中、ふと見ると、蝋燭が消えかけている。
「善逸さん、もう戻って寝ないと、訓練に響くんじゃ・・・」
「あぁ、うん、そうだね。それじゃあ今日はこれくらいにして、俺は戻るよ。訓練がしんどすぎる日は寝落ちしちゃうけど、それでも小乃実ちゃんに会うのは止めない。約束」
そう言って、前回同様指切りをする。
このままその手を握りしめて、抱きしめることが出来たら・・・
そんな妄想に駆られながらも俺は病室へ戻る事にした。