第2章 絡まった糸は柔らかな手で解けばきっと
「俺が来るの・・・迷惑じゃないかな・・・?」
ここに来る前に、一つ自分自身に約束したことがある。
もしも俺が来ることで、不安が増えたり小乃実ちゃんが嫌だと言ったらここに来るのは止める。
代わりに、小乃実ちゃんが鬼狩りに巻き込まれないように模索してみるつもりだった。
少しの沈黙の後、躊躇いがちに小乃実ちゃんの唇が動いた。
「もう、来てくれないかと思って・・・この三日、少し寂しかった。あの日の夜、善逸さんがお話ししてくれた事を思い出しながら過ごしてたの。だから・・・迷惑じゃなくって・・・その・・・もしできたら、これからも、善逸さんに会いたい」
頭が爆発するかと思った。
俺に、会いたいなんて言ってくれる女の子なんて居なかった。居たとしても、結局は金銭やモノのおねだり。
だけど小乃実ちゃんは「俺に会いたい」そう言ってくれた。
「お、俺が居ても、自分の話しかできないよ?そ、それに内容も小乃実ちゃんにとっては面白く無いかもしれないし、それに俺、鬱陶しいって結構言われるよ?」
どう答えて良いのか分からずに、つい自分の欠点ばかりをあげつらってしまった。
だけど、そんな俺に驚きもせず、ただ静かに小乃実ちゃんはこう返してくれた。
「少し前まで心なんか要らないって思っていたんです。でも、善逸さんが近くにいると・・・心が温かくなるんです」
恥ずかしそうに俯く彼女は可憐で華奢で。
それでいて残酷な運命に押しつぶされそうになっていて。
それでも、俺を必要としてくれていた。