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【鬼滅の刃】 かごのなかのとりは

第2章 絡まった糸は柔らかな手で解けばきっと



訓練の休憩中も、善逸は落ち着きがなかった。

縁側に用意された握り飯を三人並んで頬張る。
その間も朝食の時同様、ものすごい勢いで握り飯を流し込んでいく。

かと思えば、時折ぼうっとした目で遠くを見つめている。


「なぁ・・・トン逸のヤツ、何かあったのか?」


俺の反対隣りに座っていた伊之助が脇腹を軽く小突いて来た。

「わからない。でも・・・何故だか善逸からは、幸せのような匂いが少しだけ感じる」

「ヘンなヤツ。まぁ、どうせ訓練を重ねても俺様には敵わないだろうけどな!」

そう言って伊之助は立ち上がり、午後の訓練に備えて体を慣らし始めた。
縁側に二人きりになった所で善逸に話しかけてみる事にした。

「なぁ善逸、朝からどうしたんだ?」

思い切って俺は率直に善逸に問う。


「あぁ・・・うん、ちょっとな」

相変わらず遠くを見つめたままの善逸が心ここに在らずと言った様子で答える。

「・・・炭治郎、あのさ」

少しの間の間、善逸がぽつりと呟く。

「なんだ?」

「自分の意思とか誰にも尊重されずに、自由も選択肢も奪われて命の危険に晒され続けるって、どんな気分なんだろうな」

「何の話だ?」

「いや・・・今のは忘れてくれよ」

そう言って善逸はふらりと立ち上がり、庭の隅に咲いている小さな花を見つけてしゃがみ込む。

「俺に、何が出来るんだろうな。俺なんかが今更訓練したって、どうせ俺は弱いんだ。でも・・・それでもほんの少しでも何かを変えられるのなら・・・」

最後の方は殆ど聞き取れなかった。
だけど、善逸が何かを抱え込んでいるのは十分に伝わった。

「善逸、もし俺に出来る事があるなら協力するからさ、よく判らないけどあんまり気負うなよ」

「・・・ありがとうな」

そう言って善逸は立ち上がり、伊之助に続いて屈伸や腱を伸ばし、身体慣らしを始めた。
その後、両手でバチッと自身の頬を打った。

「よしっ、午後からも俺、頑張っちゃうからね! 炭治郎、全集中の常駐のコツ、教えてくれよな!」

ふり返った善逸は、いつもの明るい彼に戻っていた。

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