第2章 絡まった糸は柔らかな手で解けばきっと
いつのまにか、俺の視界はぼんやりと滲んでいた。
首謀者に違いないと思っていたしのぶさんが、影でこんな事をしてくれていたなんて。
それなのに勘違いでしのぶさんに心の中で怒りを抱いたりして・・・
「しのぶさん・・・どうにかしてあの子の事、解放してあげられないかなぁ・・・俺、昨日見たんだ。やらされている事の辛さに、あの子、自分で手首を切ってた・・・死にたいって、何度も言ってたんだ・・・」
膝を握った手の甲に、自分の涙が落ちる感覚がある。
「 善逸君は優しんですね。きっとその優しさに触れて、色んな事を話してくれたんだと思いますよ」
そういってしのぶさんはまた少し考えるような仕草を始めた。
「そろそろ・・・変化を起こす時期、なのかもしれませんね」
「変化?」
「この話は、ひとまずここまで。さ、そろそろ朝餉の時間になりますよ。病室で食べていらっしゃい」
そう言ってしのぶさんは立ち上がり、さりげなく俺の退室を促す。
考えていた最悪の事態では無かった事に安堵して、おれはしのぶさんに従い診察室を出かけた時。
「そうだ、 善逸君」
「しのぶさん?」
「良かったらだけど、時折あの子の様子、見て来て欲しいの。って言っても、他愛の無い話をするだけで良いですよ。むしろ、きっとその方があの子が喜ぶでしょうから」