第2章 絡まった糸は柔らかな手で解けばきっと
「あら・・・珍しい。あの子、私が行っても殆ど何も話してくれないの。・・・まぁ、仕方ないですよね。彼女にとっては私も敵みたいなものでしょうし」
しのぶさんの発言で、先ほどまでしのぶさんへ向けられた怒りの感情が薄れて行く。
「あの・・・あの子を閉じ込めたのはしのぶさんじゃないんですか?」
「いいえ、私です。・・・まぁ、厳密に言うと、ここだと治療も出来るから私が引き取ったようなものです。その上で、逃げないようにと牢に入れるように命じたのは別の方ですが・・・」
「誰なんです!?あんなひどい所に・・・!」
「善逸君、ごめんなさいね。余計な諍いを招きかねないから、それは言えないの。私たちの方でも、あの子に何かしてあげたいんですが・・・心を晴らすのは、薬では無理なようです」
しのぶさんは佇まいを直すと、人差し指を自分の口に当てた。
「これから話す事は、秘密の話です。善逸君、守ってくれますか?」
「はい!勿論です」
すると、少し前かがみになったしのぶさんは小声で話し始めた。
「あの子の、小乃実ちゃんの事なんだけどね。任務が完了したらこの屋敷に戻されて、怪我がないか私が診察して診断書を提出しているんだけど、鬼殺隊が少ないからってこのやり方には私はあまり賛同していないの。だから、こっそり診断書には症状を大げさに書いて、少しでも彼女の出動を抑えてるの。・・・焼け石に水、かもしれませんけど」