第1章 もう、泣かないで
「じゃあ、君を隠すためにこの牢屋に?」
「違う!!」
急に彼女が怯えた声で叫んだ。その鼓動に恐怖の音が増して来た。
「ご、ごめんなさい・・・いきなり大声出して・・・でも・・・違うの・・・逆なの・・・」
「逆って・・・どういう事?」
「どこかに鬼が出たら、私は箱に入れて連れて行かれるの。そして、囮にされるの」
「な・・・そんな・・・嘘だろ!?」
「私に敵意を持った鬼は、私に触れられないから・・・強い鬼が来たら、私を盾にする人もいるの・・・。逃げられないように、いつも縛られてる・・・」
「そんなの俺・・・知らなかった・・・」
喉が怒りで乾いている。
「鬼の中には強い鬼が居て、私の体質はどの強さの鬼まで効くのかわからないって・・・だから、いつ私が食い殺されてしまうか判らないの。目の前で鬼殺隊員が死んでも、鬼が威嚇をしてきても、私は身動き一つ取れなくて・・・もう・・・見たくない・・・もう・・・死んでしまいたい・・・」
なんて事だ。
稀血の匂いを利用して鬼をおびき寄せて切る。体質を利用して鬼の攻撃から躱す為に彼女を身体を利用する。
この子に拒否権なんて無いに等しい。