第1章 もう、泣かないで
「ひどい話だね・・・」
両親のいない俺は、その特別な温もりを知らない。
だけど、そこに在ったぬくもりが奪われる事の辛さは、行動を共にしていた炭治郎を見ていれば痛いほどに伝わる。
「だけど、どうして鬼殺隊は君をこんな所に・・・?
」
「それは・・・私の体質と、血の所為なの」
身の上を話して少し楽になったのか、さっきよりも返ってくる返事に生気が宿っている。
「聞いても・・・いい?」
「私は・・・理由は判らない。だけど、『鬼が近付けない体質』だって、そう言われた。きっと生まれつきのものだって。家族が皆食べられても私が一人だけ無事だったのはその所為だった、って」
それから、と付け加えて彼女は再び口を開く。
「それと、ここの人は私をたまに『マレチ』って呼んでる。意味はわからないけど・・・」