第1章 もう、泣かないで
「マレチのチって、血の事なんでしょ?だから・・・それが私から無くなればきっと解放されると思って・・・だから・・・手首を・・・」
最後の方は、言葉よりもしゃくりあげる涙声だった。
俺は、この子に背負わされているモノの暗さに眩暈がした。
まさか鬼殺隊がこんなことをしているなんて思いもしなかった。
死にたい、そんな気持ちは俺もずっと持っていた。
じぃちゃんに会うまでロクでもない人生だったし。
最終選別の時だって、生きてたこと悔やんだくらいだ。
だけど・・・この子に起こった事はあまりに辛すぎる。
思わず俺は、牢越しに彼女の手を両手で握った。
「こんな事・・・間違ってる。だけど・・・ごめん、俺には止められるのかすら判らない。だけど、だけど俺は!君に死んでなんか欲しくないんだよ」
自然と涙が零れた。
「だって・・・酷すぎるよ・・・君が望んだわけでもないのにこんな・・・」
想像以上に涙が止まらない。そればかりか鼻水まで。
そんな事に構う余裕も無く泣きじゃくりまくる俺に、彼女の右手がそっとあてがわれた。
「・・・ありがとう、私の為に、泣いてくれて。そんな人、今まで誰も、居なかった・・・」