第3章 君を愛しているかららしい
「もう一度聞くけど、快斗はどこ?」
「ボクがクロバカイトだ!」
何度聞いても快斗の居場所を教えてくれないロボットにため息をつく。
ロボットなら、どこかに核となる回路が必ずある。そこをショートさせれば修復するために元いた場所に帰ろうとするはず。
きっとそこに快斗がいる。…と思うんだけど、壊れて動かなくなったらどうしよう…
一か八か。何もしないよりはマシ!…多分。
快斗が拐われたとわかり動揺している自分に言い聞かせるが、それでも不安は拭えないまま。
蘭に習った背負い投げを繰り出そうとロボットの腕と胸元を掴むも、胸元を掴んだ手首をロボットに掴まれてしまう。
チッとひとつ舌打ちし、ロボットの腕を掴んでいた手で後ろ頭を掴み、頭と胸元を勢いよくグッと引き寄せロボットの顔面に膝蹴りを入れる。
よろけたロボットの背中に乗ってうつ伏せに倒し、首を捻ろうとロボットの頭を両手で掴んだところでシュッと何かが頬を掠めた。
頬を掠めたものの正体に気づくより前にパラッと落ちた髪。
その直後、ツーっと生暖かいものが頬を伝う。
反射的に慌ててロボットから飛び退き、近くにあった花瓶を投げると、ジジジッ…という音とともにかすかに焦げた臭いがし始めた。
キオクカイロイジョウ…キオクカイロイジョウ…
花瓶に入っていた水が偶然にもダメージを与えてくれたらしく、ロボットは同じ言葉を繰り返しながら家を飛び出していった。
「し…ぬかと思った……」
頬を触った指は赤かった。
少しでもズレていたら、頬ではなく首が切れてしまっていたかもしれない。
そのことに今更ながら足の力が抜け、その場にへたっと座り込む。
緊張の糸が切れたのか、先程まで感じなかった膝の痛みまで出てきたことに乾いた笑いをこぼした。
…え?っていうか、発信機つけてない…
重大なことに気づき、慌てて家の外に出て辺りを見回すも、すでにそこにロボットの姿はなく。
あー…確か予告状出てたよね、今日。
改めてロボットと接触しなければならないことに、長いため息を吐いた。